海までの道 ~あなたと私の距離~
彼女
「今日行かれなくてごめんな」
航太から夜電話が来た。
『残念だったね。あのおいしいイタリア料理食べれなくて』
「そうかぁ、あそこの店に行ったのか…」
航太の声を聞き、また少しだけ不安になった。
『航太、忙しい?』
「うん。すごく忙しいけど、出来上がった本を子ども達がどんな風に読んでくれるかと思うだけで、疲れもなくなる。がんばれるんだ。」
『…』
「どうした?和奏。さみしいか。ごめんな。」
『ううん、大丈夫。航太の声が聞こえるだけでうれしいから』
「俺も、和奏の声が聞けると安心する」
『航太、また海行こうね』
「そうだな、行こうな。…和奏…、わかなは俺の大事な彼女だからな」
『うん。ありがと』
航太は私の大切な人。それだけでいい。
電話を切った手の平からは、航太の手のぬくもりを感じていた。