【完】山崎さんちのすすむくん
ほな遠慮なく踏んづけて。
……ちゅー訳にもいかんやろ。こんなんでも一応助勤やし。俺よか立場上やし。
確か今日は手前から、非番、非番、夜間の市中巡察、やったか。
ほなら今暫くこんままでもまぁかめへんかぁ……次の誰かさんにお任せしよ。
こん三人を纏めて相手にするんもまた面倒臭い話やしな……。
とは思うものの、総長のお言葉を頭から否定することも出来ない。
故に俺はぺこりと頭を下げた。
「お三方には寝て頂いている方が静かで助かりますので」
「おや。……まぁそれもそうですね」
何とかやんわり断ることに成功した俺は、ひらり三人を飛び越える。
成る程、と穏やかに微笑むその人は、側にあった湯気の消えた茶を一口啜ると此方を向いた。
「ご苦労様です。変わり、ありませんか?」
微妙に切り離されたそれは、総長としてのお言葉なのだろう。
であるならば立ったまま話すなど言語道断。
直ぐ様その場に正座し、腿に手を置く。
「この陽気の所為か、皆少々気がたるんでいるような気も致しますが、今のところは概ね問題ないかと思われます」
そこの三人に限らず、最近平隊士らもちぃとばかしゴロゴロしとるんが多いんよなぁ。
まぁ稽古も隊務も滞りなくいっとるし、まだそれほど問題視せんでもええとは思うねんけど。
笑みを湛えたままのその人を真っ直ぐに見つめ返して報告すれば、その笑みは更に深められる。
背に差す暖かな春の日差しがあたかも後光のように見えた。
まさに、仏の微笑。
「そうですか、引き続き宜しくお願いします」
「畏まりました」
「で、貴方の方は最近どうしたんです?」