【完】山崎さんちのすすむくん

あちゃー……。


このあとに起こると予想される惨劇に思わず目を覆う。


「げほごほげほっ! ーーっ! 何しやがるりんごぉっ!!」

「ひっ!? す、すみませぇんっ!!」

「あはーもしかしてそれで許されるとか思ってないよねぇーりんごくん?」

「げ!?」

「げってなんだよコラ」

「大丈夫だりんご、俺は平助みたいにねちっこくねぇ。一発殴れば十分だ」


腹を押さえ飛び起きた原田くんに、どす黒い笑みを溢す藤堂くん、そして爽やかに青筋を浮かべた永倉くん。


うん、やっぱり踏んづけんで良かったわ、俺。


あんなん絶対相手にしとうない。


「ふふ、あとは若い人にお任せして私達は失礼しましょうか」


目の前の混沌に至極楽しそうな視線を送り、山南総長は柔らかな所作で立ち上がる。


同い年ながらその落ち着いた物腰は総長故の貫禄なのか。


「そう、ですね」


まぁ確かに知ったこっちゃない。


林五郎が勝手に余所見してやらかしただけやし。


……でも。


既にスタスタと歩き出した総長のあとに続こうと立ち上がりながら、揉みくちゃになっている義弟を見る。


藤堂くんに限界まで頬を引き伸ばされたその顔は、勿論俺には向いていない。


余所見の原因は多分俺、やんなぁ……。


赤ん坊の頃から知っている従兄弟の未だかつてないない態度に一抹の寂しさを感じつつ、俺も監察の任に戻ることにした。
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