【完】山崎さんちのすすむくん
そら俺らの世界は男色の人らも多いで?
切った張ったで毎日を過ごしとると手近なところで捌け口を求める輩もようさんいてる。
殊にこの新選組は女人禁制。
例え所帯持ちでも平隊士やと妻子は十里(約40キロ)以上離れた所に住まわせなならん。
大切な人が側におることでいざっちゅう時に命を惜しまれたら困るからや。
せやけど女遊びをするんも金子がかかる。
故に特定の相手がおらん連中は『そっち』に手を出したりする訳やが。
無理矢理はあかんやろっ!
あーやだやだやっぱりこいつ好かんわー!
つい汚ならしい物でも見るかのような目になっていた俺に、馬越くんが眉尻を下げて口を開く。
「実は少し前からこっそり追いかけ回されていて困っていたんです。最近は武田……助勤以外からもすれ違う時とかに触られたりしたりして……」
うわ……そらえげつないな……助勤が率先して追いかけ回すさかいに周りも調子のんねん。
「皆、藤堂助勤や沖田助勤には手が出せないからって私や山野やりんごくんに」
「ぶっ」
……おい、ちょい待ちや。今なんてった?
思わず吹き出しそうになった口を掌で覆って馬越くんを見やれば、彼は慌てて手を振った。
「あ、大丈夫です! りんごくんはちゃんと拒否して逃げてますから! 私もその、面と向かって拒否出来たら良いんですけど……」
はっきり言えなくて、とはっきり言わない馬越くんは確かに良い標的にされそうだ。
てか林五郎……よう似た顔してそっちの対象にされとるって……なんかややわ……。