【完】山崎さんちのすすむくん
なのに、
「あ……えと、ごめんなさい、何かいっぱいいっぱいでちゃんと聞いてなくて……烝さんの知り合いだったんですか?」
小首を傾げる夕美の言葉にひっくり返りそうになる。
てかほんまガクってなったし。
「……へ?」
「やっ、だって何かもー色々必死でひーってなっちゃってたんですもんっ! ちゃ、ちゃんと聞いとかなきゃ駄目……でした?」
今のどの辺に必死にひー?
不思議な夕美の思考に疑問が浮かぶも、おろおろと狼狽え、眉尻を下げて俺の反応を窺うようなそいつに沸々と笑いが込み上げる。
「や! ほならえーねん。あれ、うちの競合さんでなぁ、んなとこでどんな内緒話すんねやろー思たらちぃとばかし耳寄りな話やったさかいに」
「……え……ちょっ、烝さんなんか意外にやらしー」
「えーねん、何とでも言うてくれ」
たとえ何て言われたかて俺らが京を守るんや。その為には手段は選ばん。
漸くいつもの調子を取り戻してきた夕美に、俺はつい苦笑いになりながら顔の前でパンッと手を合わせた。
「てな訳ですまん! 今日は帰らしてくれっ!」
「えーっ!? 来たばっかなのにっ!」
「すぐに親方さんに報告せなならんのや。また来るからっ」
こいつにゃ悪いけど今日はすぐにでも土方副長に報告せなならん。
それだけは絶対や。
なっ?、と懇願するように頭を下げて夕美を見つめる。