【完】山崎さんちのすすむくん






「ぐぉ!?」


気持ちよく眠っていれば、突然の衝撃が横っ腹を襲う。


「っ、なんや!?」


この俺が気配に気付かんとはどれだけの手練れや!


と、文字通り跳び起きてみれば。


「……どんなけ寝相悪いねん」


そこにあったのはぐーすか眠る夕美の姿。


くるまっていた筈のかいまきから飛び出して、ごろごろと転がってきた結果、俺を蹴飛ばしやがったらしい。


そりゃ本人寝てんねんから殺気もなんもないわいな。


辺りは僅かに白んできているものの、まだ起きるには少し早そうだ。


すーすーと寝息をたてる夕美を半目で見据え、はぁと溜め息をついた。


風邪引くっちゅーねん。


仕方なくその体を抱き上げる。


簀巻きにすんで?


なんて心で溢しながらかいまきへとそっと下ろした丁度その時、うっすらとその目が開けられた。


「……つとむ……ちゃん」


掠れた声でそう言うと、彼女は一瞬にこっと無垢な笑みを浮かべ、直ぐにまた寝息をたて始める。


ふ、不意討ち至近距離はあかんやろ……! や! 俺には童女趣味はあらへんさかいになっ!


思わず跳ねた鼓動を首を振って掻き消した。


……てか完全に間違うてたな、こいつ。


なんかどんな顔してんのか気になってくるやんけ。


細く息を吐いてかいまきを前で合わせると、はだけないように袖の下を襷で軽く縛る。帯代わりだ。


もー転がってくんなや?


そう目で訴え、俺は部屋の隅へと戻っていった。
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