【完】山崎さんちのすすむくん
や! 悪いんは俺やないで! 全ての元凶はあのちっさい腹黒剣士や!
藤堂くんがいらんこと言いよるさかいんなややこい話になってもーたんやんか!
ちゅうか沖田くんて女子にゃ不自由してなさそうな顔して意外に初やってんなぁ……それとも玄人よか素人派なんやろか。島原にゃたまに行っとるしな……。
ってそうやなくて!
昔馴染みのあん人なら沖田くんのそーゆーとこ知っとったに決まっとる。
ったく、いらん呆けかましてくれよってからに……。
足元に揺れる雑草に視線を落とし密かに溜め息を吐き出すと、俺は陰りを帯びた美しい青年に眉を下げ微かに笑んだ。
「その、月並みですが、沖田助勤ならまたすぐに良い人が現れますよ」
俺なんかより。
ぽりぽりと頬を掻いて頭一つ上背のあるその人を見上げる。
すると沖田くんは一瞬目を見開いて。
「山崎さんが微笑んだ……!」
そこかい。
すっと半目になった俺に、沖田くんは慌てて手を振る。
「あ、いや、いつもは微かに表情が変わるだけでそんな柔らかい笑み、土方さんに向けたのしか見たことがなかったのでちょっとびっくりしてっ」
「左様で」
「あぅー怒らないでくださいよーほら、お陰で少し元気になりましたから! あとはやけ饅頭にでも付き合って頂ければ立ち直ります!」
やけ饅じゅ……考えただけで胃がむかむかすんねやけど。
しかしながら『ね?』と笑う沖田くんの顔を見れば断る訳にもいかない。
えづきそうになった口許を押さえ、そっと息を吐いた。
「今日は無理ですよ?」
「はいっ、近く非番を合わせてもらえるよう土方さんにお願いしときますね!」
途端にご機嫌に笑むその様子に自然と頬が緩む。
……あー俺ってお人好しっ。