【完】山崎さんちのすすむくん
まぁ、未来から来たかもしれん事は認めたろ。確かにけーたいとやらはここらのもんとは思えんからな。
ついでにこいつが割かし阿呆なんもわかった。
ほんでや。
「お前さん、この後どうするか考えとるんか?」
「……へ?」
「言うとったやないか、帰れんかもて。どないすんねん?」
「あ……そっか!! ど、どうしよう!?」
あかん訂正や。
割かしちゃう、こいつはホンマもんの阿呆や……!
余りの哀れさに俺は頭を押さえ俯く。
数日は土方副長の御厚意に甘えさせてもらうにしたってや、そこでほなさいならちゅう訳にもいかんよなぁ……せやけど屯所に連れてくんは無理やし。
そんな思案の後、俺は大きく息を吐き、ぽそり小さく呟いた。
「……ま、乗り掛かった船か」
困っとる人間見捨てるなんて大坂の男が廃るってもんや!
まぁアテがないこともないし……後はこいつ次第やな。
「よっしゃ、ほな行くで夕美」
その頭を支えに立ち上がる。
「へ? あの……?」
夕美は頭を押さえぽかんと俺を見上げた。
「困った時はお互い様や。暫くはおにーさんが面倒見たろ」
嗚呼、俺ってお人好し……。
ま、此処で会うたのも何かの縁や。こない不思議な奴と絡むんも滅多にないことやしな。
意外におもろいかもしれん。
「……あ、有難う御座います!」
……喜びすぎやろ。
「あんな、も少し警戒心も必要やで? もし俺がめっさ悪い奴やったらどうすんねん? 遊廓にでも売り飛ばされるかもしれへんねんで?」
「え? だってそんな人には見えないし」
「それでもや。最近は治安もいいとは言えん、警戒心は常に持っとけ。わかったな?」
「はいっ、わかりました!」
ほんまにわかっとるんかいな。
……ま、素直なんは嫌いやないけどな。
「そしたら取り敢えず移動や。あんま此処に長居する訳いかんしな」
いっちょ人助けといきますか。