【完】山崎さんちのすすむくん



場所を教え、諸々を説明し。


「……ト、厠って共同なんですね。しかも外だしぼっとんだし」


表から戻ってきた夕美はそんなことを呟く。


「普通やろ、あんなんうちん中あったら臭いやん。お前さんのいたとこではちゃうんか?」

「う、確かに。未来では水洗だから臭くないし、どの家にもありますよ」

「水仙?」

「はい、水で流すんですよ」

「へぇ、ほな畑には撒かんのか?」

「ええっ!? 畑に撒くんですかっ!?」

「……堆肥にしてからな」


……今一よう理解出来んのはこいつの説明やからな気がするわ。


込み上げる溜め息をふうと吐き出し項垂れる。


こんまま此処で話聞いてもいいんやけど……若干時間が勿体無い気がすんな。


それならば、と再び夕美に顔を向けた。


「……さっき風呂とか言うとったな? 入りたいか?」

「あ、はいっ! 昨日川に浸かってそのままだし、なんか頭とか気持ち悪くて」


……そういやそうか。


言われてみれば心なしか頭が砂っぽい。髪の短い俺ですらそう思うのだから長い夕美は尚更だろう。


ふむ。


「ほなまず頭でも洗うか」

「まず? って、どう見てもお風呂なんてないんですけど、もしかしてお風呂も共同……とか?」


夕美は怪訝に顔をしかめ、俺を見やる。


「まぁ共同っちゃ共同やな」

「ま、まさか五衛門風呂!? 烝さんが側で薪くべながら『湯加減どーや?』的な!? いやいや、そんなの絶対無理ですっ!」

「勝手な妄想で人に台詞まで喋らさんといてくれ」


……そない全身全霊で嫌がらんでもいーやん……。
< 26 / 496 >

この作品をシェア

pagetop