【完】山崎さんちのすすむくん
我、知らず。君、曰く。
元治二年 二月二十四日
曇り
今日、屯所にて山南総長の葬儀が執り行われた。
内々だけの小さなものであったのだが、話を聞き付けた壬生界隈の町民らが幾人も駆けつけてくれた。
まだまだ俺達に対する反感も多い中、基本人当たりの良いあの人の人徳には改めて驚く。
そしてその中に混じり、あの明里という女子もやってきた。
渇れただけなのか、泣かぬと決めたのか。
そこは定かでないが青白くはありながらも一滴の涙も見せず手を合わせる彼女に、昨日とはまた違う何かを見た気がした。
最後に何を話したのかは知る由もないが、彼女が前を向く日も、もしかしたらそう遠くないのかもしれない。
その後、山南さんの遺体は生前親交の深かった光縁寺へと埋葬する為、小荷駄方の神崎一二三と共に寺へと運んだ。
その住職もまた、同い年の山南さんとは茶飲み仲間だったようで複雑に顔を歪めていたが、あの方ならこれからも彼を手厚く弔ってくれるだろう。
此度の件において、確かに山南さんの行動は新選組幹部として、正しかったとは言えない。
だが、間違いであるとは言いたくないのもまた、事実なのである。