【完】山崎さんちのすすむくん
「まぁそう拗ねるなよ、ちったぁ和んだろ?」
未だ笑いを含んだ声のまま、副長の肘が肩にのし掛かる。
「……別に、拗ねてなんていません。思ったより元気だなと思っただけです」
「それを拗ねてるっつーんだばーか」
「む」
意地悪く口角を上げるその人に、ふにと頬を挟まれ口が尖る。
だがしかしそれは我が主である副長の御手。
故にされるがままにしていれば、それは目一杯頬を潰して離れていった。
「まぁ修羅だのなんだの言われてっけどよ、俺から見りゃまだケツの青い餓鬼だ。今回の件は流石にちっとばかり心配だったんだが……大丈夫そうだな」
沖田くんの消えていった廊下を眺める副長の目は酷く優しい。
何だかんだ言いつつ、この人にとっても彼はまた弟のような存在なのだ。
もしかして、実は沖田くん心配して探してはったんか……?
「でしたらご自分でお声をかければ宜しかったのでは」
少々痛みの残る頬を擦りながらも一応そう問うてみる。
「ばーか、俺は忙しいんだ、餓鬼をあやすのはお前に任せる。あいつもお前にゃ懐いてっからな、丁度良いだろ」
するとやはり素直でない副長は上からぐりぐりと俺の頭を混ぜて、漸く肩から離れていった。
もーそゆとこ割かしかいらしねんから。
そのまま歩き出した副長について、ニヤけた俺もまた足を踏み出す。
「ま、お前も実は満更でもねぇんだろ」
「まぁ確かに可愛いですけどね」
「は?」
しかしながら突如疾風の如く振り向いたその人に再び立ち止まる。
……、んな豪快に振り返ったら首痛ない?
思わず首を傾げた俺に、案の定副長はコキコキと首を揉むと、不思議と呆れたような半笑いになった。