【完】山崎さんちのすすむくん


「前からたまに思ってたんだがよ、お前も結構あれだな、さらーっとたらしこむ類いだろ」

「……止めてください人聞きの悪い」


それはあんさんや。


とは言えない俺はほんの少しだけ目を細める。


そんな俺を何故か僅かに顎を上げて満足そうに見ると、副長はくるりと踵を返した。


「育児は育自ってな。やっぱあいつのお守りはお前にぴったりだよ」



どこぞのおかんですか。


鍛え上げられた分厚い背にそう突っ込んで、俺もまたそのあとにと続く。


なんで子ぉもいてはらへんのにそんなおかんの名言みたいなんペロッと出てくるんやろ。


それに俺別にあの人育てとる訳やないねんけど。


そらまぁ懐かれてヤな気はせんけどや……。



育自、かぁ。



「頑張ります」



ん、成長しよ。


「や、総司のお守りにんな頑張る必要もねぇんだが」

「あ、いや別にそれだけではなくですね……」










そんなこんなで八木家の人達に挨拶済ませた俺達は、何台もの荷車を引きながら堀川花屋町の西本願寺までぞろぞろと列を成した。


荷を運び入れるのに日を分けなかったのは勿論副長の考えからである。


かなり目立つこの行列は、俺達が西本願寺に入ったと周知させる為。


大きな隠れ蓑を一つ失ったと、過激な思想を持つ奴等に見せしめる為だ。


そんな細やかなところまで考えを巡らせる我が素晴らしき主に感心しながら辿り着いた新たな屯所。


その広大な境内の中でも北東にある北集会所と太鼓楼の二つが俺達にとあてがわれたのだが──





「でけー!」

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