【完】山崎さんちのすすむくん
刻と言うのは日々平等に巡る。
が、しかし時にゆっくり、時に素早く過ぎるものでもあったりする。
俺にとってこの三日と言うのは──
あっちゅう間やった。
「……えと、こんばんは」
「……ん、久しゅうに」
藤田屋の前、微妙な空気が俺たちの間を漂う。
単に久々だから、というのでは間違いなく、ない。
互いにどこかよそよそしい笑みを浮かべて笑い合うも会話が続かない。
ちゅうてもまぁいつまでもんなとこおる訳にもいかへんしな。
「えと、ほなとりあえず行こか」
「あ、は……」
いつもの如く差し出した手に夕美が固まる。
あ……ついいつもの感じでいってもたけどあかん……かった?
や、でも急に気ぃ遣うんも変やん? 今更やん? いかにも意識してまっせーな感じやんっ!
「ほら、急がな夜ぉ明けてまうで、早よ行こや」
宙に浮いていた手を強引に握り歩き出す。
幸いにいつもの寺はすぐ近く。ぎこちないままではあったが、大人しく手を握り返してきた夕美にホッとして道を進んだ。
がしかし。
「……えと、しっか掴まっとってな?」
「は、はいっ」
屋根に上がるには俺が抱き上げて連れて行かなければならない訳で。
その距離感に顔が、見れない。
……前までよぉ平気やったな、俺。