【完】山崎さんちのすすむくん
そうこうしつつも、何とか上がった屋根の上。
隣り合わせに腰掛けるとまたも沈黙が流れる。
明日は雨なのか、空には千切れた雲が多く浮かび、少しばかり強い風が髪を揺らしていく。
花冷えする夜。俺はブルッと体を震わせると漸く隣に視線をやった。
「……寒ない?」
「あ、はい、大丈夫です」
そう言ってにへっと笑う夕美であるが。
着とるんは襦袢に袷だけ。加えて冷え持ち、赤っ鼻。うん、絶対寒いやろ。
「無理しな、これ着とき」
女子があんま体冷やしたらあかんしな。
着ていた羽織をその肩に掛ける。
するとぴくりと肩を揺らした夕美は、数瞬固まって。
「へへ、有り難うございます」
嬉しそうに微笑んだ。
……なんやろ、やっとこさいつもの顔になっただけや思うねんけど、ド、ドキドキするんはなんでやろか。
あかん、俺やっぱしこーゆぅん苦手やわ。女子に化けて男に迫られとる方がよっぽど気ぃ楽やし。
……、それもどーなん俺……。
「あの、今日はその、突然呼び出してごめんなさい」
色々とごちゃつく頭の中でひゅるりと冷たい風が吹き荒ぶのを感じていれば、足許に視線を移した夕美がポソポソと話し始めて。
核心に触れたその言葉にトクリと心の臓が跳ねた。