【完】山崎さんちのすすむくん
そんな夕美の頭をぽふぽふと撫でる。
俺にも子がおったらこんなんやったんかなぁ……。
まぁこんなでかい子がおる年でもないけど。
何となく頬が緩むのを感じつつも、それ故に沸き上がる申し訳なさで僅かに眉を下げた。
「別に謝らんでもええ。きついこと言うてるようやけどな、俺かていつまでも側におる訳にもいかんのや」
「あ……そう、ですよね、何か色々迷惑かけてごめんなさい」
「せやからそこは気にせんでええて」
更にしゅんと小さくなった夕美の髪を雑に混ぜた。
しかしながら言うべきことは全てここで言っておく方が良いだろう。
「まぁでも俺にも仕事があるんでな、三日や。その間にここでの生活を叩き込む。そん後は住込みで働けるとこ探したるさかい、なんとか自力で頑張ってもらうで?」
「……あ……はい、わかり、ました」
不安を目一杯湛え、それでも小さく頷いた夕美の隣に腰を下ろし、そっとその頭に手を置いた。
「妙なとこには連れてかんから安心しぃ、俺の馴染みは皆気のええ連中や。俺も極力手ぇ空いたら顔出すさかい、困ったことあったら遠慮せんと言ったらええしな。それにどっかに住むとこある方が帰る方法も落ち着いて探せるっちゅーもんやで?」
あとはこいつの頑張り次第や。
頼りなく俺を見上げくる夕美の視線を受け止め、優しくその頭を撫でながら柔らかく笑う。
少しでも安心させてやれるようにと。
そのうち幾分不安を残しながらも覚悟を決めたのか、漸く夕美が小さく笑った。
「……はい。有り難うございます」
いざとなれば女は強い。こいつなら何とかするやろ。
ニッと笑い返すとぽんと背中を叩いた。
「ん。ほなちゃっちゃ頭洗てさっさと風呂行こか」