【完】山崎さんちのすすむくん
最近はいつもこうだったから。
夕美と甘味処へ入っても俺が頼むのは大抵茶だけ。故にいつの頃からか一口分けてくれるようになったのだ。
習慣というのは恐ろしい。
「「つい」」
計らずも声を揃える形となった俺達に、林五郎の唇が微かに尖る。
それに、そいつの二つの想いの欠片が見えた気がして、胸がチクリと痛んだ。
こうして三人で顔を合わせるのはあの隠れ屋以来初めて。
俺が林五郎と夕美の距離感を知らないのと同じで、林五郎も俺達のそれを知らない。
いくらこいつが俺の背を押そうとしてくれようと、奥底にある想いは消そうとして消せるものではないのは重々承知だ。
だからこそ色々、後ろめたさを感じてしまう。
「まぁええけどや。お兄て昔からそーゆーとこあるよなー」
アホらしいとでも言わんばかりにヒラヒラと手を振って、林五郎は己の団子を頬張る。
それはきっと『気にするな』という意思表示なのだろう。
「……そーゆーとこてなんやねん」
だからそこは素直に受け取ったのだが。
「だってお姉とおった時かてよぉ」
その言葉に夕美がぴくりと反応した。
琴尾の話はあんまこれの前でしてほしなかったんやけどな……。
あまり気持ちの良い話ではないだろうということは容易に推察できたから。
「……まぁええわ」
林五郎も不味いと思ったのか、不自然極まりなく話を終わらせる。
が、