【完】山崎さんちのすすむくん
「あかん、かった?」
だって近過ぎんねんもん、こーする方が手っ取り早いやん?
そら誰にでも出来るっちゅうもんやないけど。それにや……。
先程から胸に燻り続ける感情に内心密やかに眉を潜める。
「あ……かんくない、です、けど」
「けど?」
「……や、何かさっきのりんちゃんの話凄い納得しました……」
だがしかし、目尻を押さえたまま脱力したように半笑いで視線を逸らす夕美に思わず口が尖る。
頭にあった奴の名がその口から出たことに仄かな不満が疼いて、再びその体を抱き寄せた。
「あいつかてしてったやん」
鼻にっ。
夕美にその気はなかったとはいえ、口付けを落としていった林五郎。
それと反応が同じというのは少しばかり、傷付く。
そんな拗ねた自分が何とも幼稚で滑稽で。
堪らず溜め息を溢していると、ふと押し戻すように胸が押され、上目に見つめくる夕美と目が合った。
「もしかして烝さんって結構……やきもち妬き、ですか?」
……何で笑てんねん。
何とも言えないそのこそばゆさに、今度は俺が視線を游がせる番だった。
「……あかん?」
「やっ、全然あかんくないです。寧ろ意外と可愛いなーって思って」
「……別にかわいないし。ちゅうか可愛い言われて喜ぶ男おらんし。俺かて、男やし」