【完】山崎さんちのすすむくん
「総司だって風邪ひいてんじゃん、結構長くない?」
それはさっき俺が言った『組頭である立場で』という言葉に対する反論なのだろう。
だが藤堂くんがそう思うということは、恐らく他の隊士たちの間でもそう思っている連中がいるということが推測される。
今はまだ時折熱が上がるくらいで隊務はほぼ問題なくこなせているが、それでも日に何度も溢れる乾いた咳は隠しようがない。
本人はあんま言いたないみたいやけど……やっぱしこら周りが訝しむんも時間の問題かな。
「そうですね、彼にも気を付けてもらわねば。しかし今日のところは人を気にしている場合ではありませんよ、早く休んでくださいね」
「んー」
熱の所為なのか既に眠りかけているのか。
表の気配に全く気付いていないその人に声を掛け廊下へ出ると静かに障子を閉める。
そして少し離れた所に立ち、苦笑いで西日を受ける沖田くんへと顔を向けた。
「やはりそろそろ隠し続けることは難しいでしょうか」
「……かも、しれませんね」
ここで多少の気休めを言っても仕方ない。常に現実を見ること、それが今の俺に必要なことである。
言った側から咳を溢すその人を見ても、もうあまり動じなくなった。
良くも悪くも、慣れてしまった。
「……あ、それより」
目を僅かに開いて沖田くんがさらりと話を変える。
緩んだ、というか焦りが混じった空気にこの人が俺を探していたのだと理解した俺は、視線を向けたまま次を待った。
「ちょっと助けてほしいんですけど」