【完】山崎さんちのすすむくん
しかし相変わらずいとも簡単に警戒を解いてしまう夕美にどうしても心がざわついた。
「気ぃつけや」
そら誰彼なしに信用すんなとは言わんけど、一回おうたくらいで尻尾振って懐かれてもかなんわ。
ぽん、と一瞬俺が手を置いた頭に触れ、僅かに口を尖らせた夕美が呟きを漏らす。
「烝さんってそーゆーとこ心配性ですよね」
「そらそやろ、ええ奴ばっかとは限らへんねんから」
用心しとったかて何が起こるかわからへん。毎日どっかで死体が転がる、今の京はそんなとこや。
琴尾かてそうや。
一緒に住んどっても肝心な時に俺はあいつを守ってやれんかった。
やからこそ心配なんや。
新選組の隊士である俺は、ずっと傍にいてやることは出来んから……。
「別に子供扱いしとる訳やない、お前さんが大切やから言うんやで?」
そっと簪に触れる。
この前贈ったそれを差してくれているのが嬉しい。
そう思える相手だからこそ、俺は心配で堪らないのだ。
もう、あんな想いはしたくないから。
「……はい、気を付けます」
モジモジと頬を赤らめた夕美が俯き加減に返事を寄越す。
「ん」
その可愛らしい反応についそのまま肩口に頭を引き寄せたくなるのだが。
……流石に此処はな。
理性がそれを止めた。
別っこに住んどるってまどろっこしいなぁホンマ……。
「ええとこすんまへんなぁお邪魔しますえーほい夕美ちゃん」