【完】山崎さんちのすすむくん
『今日』という言葉がどうも引っ掛かる。
確かに俺達の関係が変わって以来、極力夕美が俺に休みを合わせるようにはなったが、今回は珍しく『休めませんか?』という夕美の指定だ。
皿から視線を上げると、さっとその目が游ぐ。
「や、その、ほら今日で丁度二年だし……どーせだから明るく祝っちゃおうかなって」
再び目が合い、えへへと苦笑いで頬を掻いたそいつに漸く合点がいった。
そか、今日でこいつを拾て二年……。
細かな日付はすっかり忘れて、というか気にしていなかったのだが、先の世では産まれた日を誕生日などと言って祝う感覚だったことを思い出す。
にしてもしんみりせんと祝ってまうとこがまたこいつらしいっちゅうかなんと言うか……。
夕美自身も多少複雑な想いがあるようではあるが、俺を巻き込んで一緒に祝ってしまえば、というところだろう。
であれば俺のすべきは一つ。
「二年間よぉ頑張ったな」
明るく過ごす、ただそれだけだ。
軽く頭を撫でると、ほっとしたのかその頬が緩む。
柔らかくなった空気に、俺は悪戯っぽく肩を竦めた。
「まさかこーなるとは思てへんかったけど」
「それはこっちの台詞ですよっ。私別に歳上好きとかじゃなかったし気になる人だって──……」
「……、ほぉ?」
それは初耳や。