【完】山崎さんちのすすむくん
暫しの別れは
慶應二年 一月二十六日
曇り
昨年末に帰京されたばかりの局長らであるが、永井殿らが再び向こうへと赴くとの報せから、再度安芸に発つこととなった。
しかも出立は二日後という忙しなさ。
そして、前回同様伊東参謀と尾形助勤はそれに伴うのだが、武田助勤の代わりとして此度加わったのが篠原である。
次があれば、の言葉通り伊東参謀に願い出たらしい。
これで清々する、と言いたいところだがそういう訳にもいかない。
先の安芸行きで局長らは長州入国を拒否されている。恐らく此度も入国は厳しいだろう。
故に安芸でより多くの情報を集める為に俺と、同じく監察方の吉村貫一郎とに、探索方として密かに同行するようにとの命が下った。
言わずもがな、副長からの指示である。
もしものことを考え、警護を兼ねて局長らとは付かず離れずの距離で向かうことになる。
間違いなく長い旅になるだろう。
緊褌一番で当たらなければならない。
ただ、気がかりはある。
残していく沖田くんの体調もそうではあるが、もう一つ。
此処に書くのは憚られるが
否、やはり書くのは止めておく。
とりあえず今は隊務の遂行を一番に考えなければならない。