【完】山崎さんちのすすむくん
歩いて、歩いて、歩いて。
時に軟弱な吉村くんの背を押しながら必死に局長らのあとを追い辿り着いた安芸──広島は、京や大坂とはまた違う賑わいを見せていた。
海が近い、というのもあるのかもしれない。
その活気に満ちた空気は不思議と心地良かった。
慎ましく暮らしているごく普通の人々は何処に住んでいようと変わらない、そんなことを改めて思い知る。
そして、長州との話し合いが持たれるその日。
吉村くんに町の様子を探索するよう頼むと、俺は一人屋根裏で長州支藩との話し合いを隠れ聞くことにした。
だが奴等は十万石の削封を申し付けられたというのに痛くも痒くもないといった様子で、更に家老の召喚命令も病だとの一点張りで拒否するという強気な態度。
何かを企んでいるのではと勘ぐってしまうのは考え過ぎなのだろうか。
無意識にもどんどん焼けの京の光景を思い出して眉が寄り、そんな己を戒めるように大きく息を吸った。
そしてやはり局長らの長州入国は最後まで認められず、事実上四人はこれ以上の臨席すら不可能に。
予想通り、とでも言うべきなのか。
兎も角ここからが俺達の隊務の始まりである。
「局長」
「うほっ!?」