【完】山崎さんちのすすむくん
……やっぱそうくるわな。
責任感が強く負けず嫌いでもある局長のこと、そうなるであろうとは思っていた。
でなくば、俺が此処に来た意味がない。
「承知致しました。我々も暫く此方で探索にあたりますので、互いに重ならぬよう範囲を分けましょう──」
元より篠原は伊東派と言われるうちの中枢、そして尾形は局長の気に入り。
分かれるなら当然そうなるだろうと予想はしていたのだが。
前回同様武田が来る筈だったのを、参謀に頼み込んでまでその役を手に入れた篠原の行動がほんの少し気になった。
俺はまたてっきり局長につけいろぉとでもしとるんや思ててんけどなぁ……。
まぁバラけてくれんねやったらかまへんけど。
そんなことを考えつつ、三人で簡単に描いた地図を見ながら話を詰めていった。
帰屯は其々が頃合いをみて。
これで明日からは完全に目が届かなくなる。
「……局長は良くも悪くも名が知られております故、あまり深入りされませぬようお気をつけください」
「うむ。まぁ歳も山崎くんがいなくて苦労しているだろうからな、早めに戻るさ」
出すぎたことかと思ったが、いつものように笑って下さった局長に、微かな笑みを返す。
すると漸く隣にいた尾形がおずおずと口を開いた。
「でも山崎さん、何でまた、女装?」
「……副長からの、命です」
事実を告げた俺に注がれた憐れむような二つの視線が少しだけ、痛かった。