【完】山崎さんちのすすむくん


「そぉですか……」


今までは気の良い親父という印象だったのに、正直今に限ってはただの邪魔者でしかない。


まぁ夕美を思ってのことやし有り難いような気もせんでもないけどや……。


何とも言えない複雑な心境と状況に、どう反応して良いのかも微妙に困る。


確かに親父さんのいう通り、健気でいじらしい夕美の行動はくすぐったい喜びが湧く。


が、二人だけなら甘い空気にもなろうものの、如何せん今はにやついた親父付き。話しづらいことこの上ない。


だからといって、このままほなさいならというのはあまりに寂し過ぎる。


せめてもう少しだけ二人で話したい。


「あの」
「あの」


それは夕美も同じ思いだったらしく。


同時に発せられた言葉に思わず顔を見合わせた。





「……しゃーないなぁ、ほな儂は先戻らしてもらうわ」


お、意外にすんなり。


と思ったのも束の間。


「せやけど山崎はん、妙なとこ連れ込みはったらあきまへんえ? 残念ながらこの子明日も仕事やさかい」


肩を叩きながら念を押すようにかけられた言葉に、また一気に頬が引きつった。


「しませんてっ」

「んーどうかなぁ? 意外にがっついてはったし。まぁその気持ちはよぉわかります、せやけど今日はなんとか我慢しておくれやす。夕美も付いていったあきまへんえ? ほな山崎はん、よろしゅうに」


にこりと笑って建物の中に消えていった親父の残した空気が辛い、色々。


……えっと。


「とりあえず此処やとなんやし」

「……え?」

「や! ちょっとあっこの隅っこ行くだけやから! なんもないから!」


くすんっ、ほらちょっぴり警戒されてもーたやんっ!
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