【完】山崎さんちのすすむくん
既に目指すところが異なっているのだから、彼方も長く留まるのは不本意である筈。
動き出した以上、すぐに手を打ってくるのは想像に容易い。
一月(ヒトツキ)内には、ちゅうとこやろな。それにや……。
「まずまずだ」
にやりと不敵に笑むも、単純にそれで良しとしないところがやはり父親のそれを彷彿とさせる。
まぁうちのおとんは笑んでもくれんかったけど。
そんな我らが新選組のお父さんは口許を緩ませたまま、鋭い視線を向けてくる。
「奴等がどんな理由を用意しようと離隊は認めてやる、これ以上隊を引っ掻き回されちゃ堪んねぇからな。だがこっちの幹部まで持ってこうってのは見過ごせねぇ」
そう、今回声が掛けられた二人に加え、最近参謀にべったりな藤堂くんもだと考えると、此方としてはかなりの損失。
しかも永倉斎藤といえば助勤の中でも上位の腕前で。
「尊皇も攘夷も悪かねぇが幕府を潰せって考えは最早長州の奴等と同じだ。そんな思想を持った奴等がうちとは別に力を持とうなんぞ危険極まりねぇよな」
「御意に」
そこに揺らめく敵対の意が垣間見えた。
こっちも大義名分が出来次第一気に仕掛けるっちゅうあれやな。
まぁ伊東さんは個人的には嫌いやなかったけど……。
でも町焼こしたあの長州の輩とつるまれてもかなんし。
これも京を戦火に巻き込まん為やと思えばしゃあなし、
……やんな。