【完】山崎さんちのすすむくん
副長は町を『守る』と言ってくださった。
俺が此処にいるのも少しでもそれに力を添えることが出来ると思ったからで。
でも、最近ふと思う。
確かに長州は朝敵であり、過激な思想で京を火の海にしようとした憎き連中だ。
蛤御門の戦いでも、彼らが仕掛けてこなければ無駄な死者は出なかった。
奴等の考えには同意など出来ないし、寧ろ憤りすら感じる。
だが、安芸で見たあの戦い。
あれはそれと同じことを幕府が仕掛けたに過ぎないのではないか。
今はまだ我々新選組は守護職のお預かりであるが故、京の治安維持に努めるに留まっているが、もしこの先局長の念願叶って召し抱えられた時。
『民』ではなく『将軍』の為に戦えと言われたら俺は、はたして戦えるのだろうか。
初めはただ、直参など興味もなく土方副長の為にと思っていた。
否、今も思っている。
彼のお方の為なら身を挺しても構わない。
けれども、敵と判断を下した相手には恐ろしいまでに冷徹になりきれるその人は時折……恐ろしい。
仕方ない。
そう、頭ではわかっている。
己の友を、組の頭を──この新選組を、上へ上へと押し上げたいという気持ちは重々承知しているつもりだ。
ただ、その温度差にちょっとだけ首筋が……冷えるんや。
「あ、見て見て雪だるまっ」