【完】山崎さんちのすすむくん
移ろいゆく刻
慶應三年 一月十八日
薄曇り
今日、伊東参謀と新井忠雄が九州に遊説に発った。
数日前に唐突にそれを言い出したと聞いた時はあまりに予想通りで笑ってしまったが。
我々からすれば説いて回るものなどない、といったところではあるが、最早彼等に新選組隊士という認識は消えているのかもしれない。
理由は兎も角西へ下ったということで、彼等の目的が彼方側と手を結ぶことだというのが俄(ニワカ)に真実味を帯びてきた。
恐らく帰ってきた時が一つの転換期となるだろう。
どんな理由を携え戻るのか、ある意味楽しみである。
あえて好きにさせた副長にも何か思惑があるに違いない。
全ては彼等が戻ってからだ。
今は余計なことは考えずに、与えられた任務を遂行するに限る。
それでなくてもここ数日胃が痛む毎日なのだから。
溜め息の数だけ幸せが逃げると誰かが言ったが、確かにそうなのかもしれないと最近思う。
気を付けようと思ったそばから漏れでるそれに、また嘆息する。
我ながらなかなかどうして、だ。