【完】山崎さんちのすすむくん
まぁ……そらそーやな、行くわな。元々おとんのツテやし。
そこまで考えてふと気付く。
……え、ちゅうことはなんや、まさかアレまで筒抜けやったり
「あ、気配にも気ぃつかん阿呆は修行しなおしやって俺宛のんに書いたあったで」
しますわなぁ!
鼻で冷たく笑う林五郎の一言に頭が痛む。
藤田屋のおっちゃんほんまえげつないわっ! んなことまで一々報告せんかてええやんっ!
そら、まぁいつかあいつのことは言お思とったけど、そん時は自分の口でや思てたのに……。
ギュッと奥歯に力が入るのは羞恥か不安か。
こんな一行の言葉では父が──皆がどう思っているのかさっぱりわからない。
昔からうちと琴尾の家は一つの家族のようなものだった。亡くなったとは言え琴尾以外の女子と、なんて、皆がどう思うのか少しだけ怖い。
忘れたわけではない、が何となく裏切りを犯したような罪悪感が湧きあがった。
「阿呆、皆ただ単に見てみたいだけやし」
そんな俺の心を見透かしたように林五郎が呆れを隠さず仁王立つ。
「せやさかい、また連れてったらええんちゃう?」
再びその懐から出てきた白い紙を俺に押し付け、そのまま歩き出した林五郎を慌てて振り返った。
「阿呆お兄」
なんて半目で俺を睨むそいつはすぐに前を向いてスタスタと遠ざかっていくけれど。
残された文はこれまた見慣れた下手くそな字が綴られていて。
「……おーきに」
それが夕美からのものだと気付くのに時間はかからなかった。
けれど──
「……え」