【完】山崎さんちのすすむくん
虚空
慶應三年 七月一日
曇り
夕美が消えた。
帰ったのか。
わからへん、わからへん
あれは何や
確かにあいつは一回だけ俺の事を烝ちゃんや言うた
それに最後のあの言葉
やっぱりてなんやねん
今まで嘘をついとるあれやなかった
やのに全部わかったようなあれはなんやねん
わからへん
なんでやねん
あの場に残されていたのは着物と簪、匂袋
櫛だけは何処にもなかった
先の世の娘
決して交わることのない刻
心積もりはあった
あったけどや
ほんまなんやねん