【完】山崎さんちのすすむくん


守護職本陣は御所の少し東に位置し、此処からだと途中四条河原を突き抜けていく形になる。


飯を取るにも丁度いい。


それにあそこは京でも特に栄えた場所、見せておくに越したことはないだろう。


まぁ遊び行く訳ちゃうけどこいつも多少は楽しめ……、


「うわー賑やかですねっ! あ、あれは」

「こら、うろうろせぇへん」


楽しみ過ぎや。


ちゅうか懐かしやんけ。前にもあったわこんなこと。


……大分、前やけど。


ふらふらと店先に吸い込まれて行きそうだった市村くんの首根っこをひっ掴み、歩みを修正させると、何やら横から妙な視線を感じる。


「何や?」

「あ、や、言葉が」


あー……。


「すみません、元々上方の人間なので、つい」


自分があいつみたいなことするからや。


とは流石に言えず。


複雑に湧いた思い出を奥に押し込め、適当な理由でさらりと流そうとしたのに、その目は尚も輝く。


「そうなんですね! 山崎さん副長や助勤の方にも頼られてるから、てっきり試衛館からの付き合いなんだと思ってました!」


……ほぉ、もう試衛館のことも聞いたんか。


「俺もいつかはちゃんとした隊士になって山崎さんみたいになりたいなぁ」


なんて、夢を語るかの如く顔を綻ばせる少年に、単純に喜ぶことは出来なかった。


副長の思いに、時勢の風向き。


大政奉還がなされた今、俺達の足許でさえ危ういのだから。



「俺、新選組のことを聞いて、ずっと入りたかったんです!」
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