【完】山崎さんちのすすむくん
分離から半年と少し。
あくまでも友好的な関係を保ってきた御陵衛士。
隊士間の接触は禁止されている今、堂々と此処に立つ斎藤くんの姿はどこか浮いていた。
よく考えてみればそれも当然。
この不動村の屯所に彼が入るのは初めてだった。
そして、彼が俺を介することなく自らの足で此処にいる。
それが示すものは一つしかない。
──彼等が、動き出したのだ。
この時期に、か。
ちらりと俺と目を合わせると、斎藤くんはその髪を揺らして歩き出す。
門番にでも聞いたのだろう、向かうのは副長室のある方向。
「あれ、あんな人いましたっけ?」
「すみません、これ、やっぱり貴方がお願いします」
「……ええっ!?」
俺の視線を追ってきょとんと首を傾げた市村くんの胸に、手にしていた紙を無理矢理押し付ける。
すっとんきょうな声が背に届いたが、どう考えてもあっちの方が緊急性が高いのだから仕方ない。
「貴方なら出来ます」
ちゅうかやれ。
副長の元にいて、俺のようになると言うのならこれくらい頑張ってもらおう。
一瞬だけ振り返りそう声をかけると、そのまま急ぎ足で斎藤くんのあとを追った。