【完】山崎さんちのすすむくん
隣に
慶應三年 十二月九日
曇り 時々雪
今日、王政復古の令が発せられた。
やはり大政が奉還されたこの期を、奴等は見逃さなかった。
御所にて実行されたそれによって、長く続いた幕府の廃止や、京都守護職、所司代の廃止が定められた。
幕臣、そして守護職お預かりである我々の足元は脆く崩れ去ったという訳だ。
加えて、先日の油小路での一件から新選組廃止の声が多く上がったらしく、今日を以て新遊撃隊と変名することになった。
あれだけ派手に動いたのだ、やはりどれだけ工作しても人の口に戸は立てられぬということなのか。
兎も角、上の動きがどうであれ我々はまだ一応元守護職の直下にあるようだ。
今はまだ先が読めぬ状態。
大樹公(徳川将軍)がどうなされるのか、その動向を待たねばなるまい。
だがこれには流石に局長も副長も苛立ちを隠せないご様子。
あれ程欲し、漸く手に入れたものがかくも簡単に掌から零れ落ちればそれも無理はない。
あの日、油小路から逃げおおせたらしい篠原はこの号令が民に布告される時、一体どのような思いでそれを聞くのだろうか。