【完】山崎さんちのすすむくん
伏見を追われることになった俺達は更に南西に位置する淀へと陣を移した。
絶え間なく続く銃声。
悲鳴。
呻き声。
立ち上る硝煙に段々と脳の奥がヒリヒリと麻痺していく。
じわりじわりと追い詰められていく様はまるで狩りのようだと誰かが言った。
その通りだと、思った。
異端を摘み取るものから異端へ。
世の流れとも言うべき時勢の大きな変化に、この先どう抗っても俺達の行く末などとうに見えている。
抵抗して、戦って。それで関係のない人々を巻き込むくらいならいっそ……。
幾度も過るそんな考えを、なんとか踏み留まらせているのはあの方のご恩顧に報いたいという思いと、父との約束。
……ここまでついてきながらまだうじうじ悩むやとか……俺の阿呆……──
「山崎」
乱破としてあるまじき己の弱さに沈みそうになる心を何とか奮い立たせ。淀藩の裏切りとも言える入城拒否を報告し終えた時だった。
副長の目が真っ直ぐに俺を捉えた。
戦いが始まってからは戦略を練ったり指示をだしたりでほぼ合うことのなかったそれに、少しだけ違和を覚える。
先程までとは若干異なるその鋭さは、何故か出会った時を思わせた。
「はい」
「入城出来ねぇんじゃ仕方ねぇ、俺達はこのあと男山の方に向かう」
此処での敗けも最早見えている。それは仕方のないことなのだろう。
「承知しました」
「お前は残れ」