【完】山崎さんちのすすむくん
大敗と言っても過言でない程に今日の戦闘は悲惨なものだった。
物資も少なく、手当てといっても大したことは出来ない。
それでも医学を学んだ者として。一人の人間として。
一人でも多くの命を救うことが出来ればと。
任務中だからと言う理由で、伸ばされた手に見ないふりなどもうしたくはない──
それが、願い。
少しずつ遠ざかる銃声。
身を潜めつつも近くにいた連中の手当てを済ませ辺りを見回すと、そこには見たこともない数の人の体が転がっている。
殆どが既に事切れた物言わぬ身体なのだというのは見た目にわかる。
見知った顔ばかりという事実はやはり胸が抉られた。
それでもまだ息のある人間もいるかもしれないと、片っ端から確認していく。
奥歯を鳴らし、唇を噛み。
頭を撃たれた人間を間近で見た時は思わず胃の中が込み上げた。
副長が俺に裏をやらせなかった理由が今ならよくわかる。
結局、俺には人を殺める勇気などなかったのだ。
幾ら乱破として主に仕えたところで、俺の本質は町医を望んだあの頃と何ら変わっていない。
漸く気づいたそれはあまりに今更で身勝手なことなのに、何故か涙が滲みそうになるくらいに心底、安堵した。
そんな時だった。
「……ん?」