【完】山崎さんちのすすむくん



「何でお前さんが泣くんや」


俯く夕美の頬が濡れているということに。



「だっ……て」


震える声で鼻を啜れば、ぽたりと雫が落ちた。


微かな光を映す透明な涙は、その小さな手で拭っても次から次に溢れるように頬を伝っていく。


「っ、ごめ……なさ……」


下を向きぽろぽろと泣き続けるその姿に、俺は心苦しく、ただ狼狽えるしかなかった。


「……すまん、こないな話、やっぱ人にするもんやないな」


人が死んだなんていう話は誰が聞いても気持ちの良いものではない。


それでこれが泣くならそれは俺の責任だ。


俺の所為で誰かが泣くというのはやはりやりきれない。


それが、女子供なら尚更。



「すまん……泣かんとってくれ」


そっと、その濡れた顔を胸に抱き寄せる。


溢れた涙が頬を伝わないようにと。


「……すまんな、泣かせるつもりやなかったんや。悪いんは俺や、お前さんは謝ることないで」


とんとんと、子供を宥めすかすかのようにその背を叩く。


昔から林五郎や琴尾にそうしてきたように──



部屋が静まり返ったと思ったその時。




「…………、うわわっ!?」

「っ!?」



予想だにしない力が胸を押し、勢いよく流れた景色の先で、


ごちん!


と、盛大な音を奏でさせてくれた。
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