first love

誓い

車に戻り、無言で走り出した。




車の中で流れる音楽だけがあたしたちを繋いでるみたい。





こんな時でも感心する。

ちゃっかりあたしの好きな宇多田ヒカルのCDを持ってきてるんだもんね。







「夜、何食べたい?」

沈黙を破ったのは翔の方。


何にもなかったみたいな顔してる。




「翔のオススメなとこ。」

「んー、沖縄のもんは一通り食べたもんなー。」





そんなこんなで最終日の最後の食事は、

沖縄感漂う民衆居酒屋。



独特の音楽と、店員の独特の方言が沖縄を感じさせる。




「俺さ、中学までしかこっちにいないから居酒屋とかって分かんないんだけどさ。
ここは割と有名なんだって。」


「そうなんだ」


あたしたちは乾杯した。






このガヤガヤした店内。
あたしたちの沈黙を誤魔化すみたい。



うるさい場所は嫌いだけど、
今はこれくらいがちょうどいい。






「なんかさ、やっぱ俺、将来は田舎に住みたいな。
沖縄じゃなくても、東京から離れたいっていうか(笑)」



沈黙を破るのはいつも翔。

気を遣わせてるのかもしれない。




「なんで?」

「東京は、やっぱ田舎者の俺には合わない気がする。
みんな冷たくて、人に興味なんてないくせに、ちょっと有名になると勝手に噂されて。
汚い世界も嫌になるくらい見てきたし。
そういう場所から離れないなぁって。」


翔に田舎って、やっぱりいまいちピンとこない。




「美華はいつまで北海道にいたの?」

「18まで。
高校卒業してすぐ東京いったの」


「日本の一番南と北が東京で出会うんだもんなー。
そう考えるとすげーなー」


翔は泡盛をグイッと飲み干す。


だんだん酔っ払ってきてるのが分かる。

翔があたしより先に酔っ払うなんて珍しい。




「翔、ペース早いよ」

「いーじゃん。
最後なんだし。
美華も飲めよ」

あたしにも勧めてくる。


「二人とも潰れたらどうにもなんなくなるじゃん!」



そう言っても酔っ払ってあたしに飲ませる翔。






結局、あたしはこの日の記憶は途中から消えている。



二人して記憶がなくなるくらいベロベロに酔っ払ってたくせに不思議と朝ホテルのモーニングコールで目覚めた。




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