ごめんなさい【BL】
2
「ごめんなさい」
その言葉を聞いたのは、もう何度目になるか分からない。
謝罪の言葉とはまるでかけ離れた鮮やかな笑みを浮かべて、想い人は溜め息を吐く。
「いい加減、諦めたらどうですか?」
今度は少し冷めたような口調で、また溜め息を吐く。
「…煩ぇ」
俺はただそれだけ言って、自分とあまり変わらない体格のそいつをベッドに押し倒す。
「僕、貴方のこと…嫌いじゃないけど好きでもないですよ」
そんなことは理解ってる。
何度も言われたから。
――それなのに。
「あーあ。また彼氏に怒られちゃう」
そう言いながらも俺を拒まないお前は一体何なんだ?
「ねえ。僕の代わりに怒られてくれます?」
「黙れ」
「冷たいなァ…。僕のこと好きならもっと優しくしてくださいよ」
「優しくしたら、俺のものになるのか?」
いつものように何の屈託もない笑顔を浮かべて。
「――無理ですね」
俺の耳元で呟く。
それなのにどうして。
「何故俺を拒まない」
「何故でしょうね」
俺の髪を掬って、口付ける。
そして、不適に笑んで腕を頸に絡めてくる。
「シないんですか?」
「――黙れ」
そうやって、うやむやな感情を抱えたまま抱くのは何度目だろう。
口では俺を拒み、躰では容易に受け入れる。
こんな関係は何も産み出さない。
何も残らない。
何も、手に出来ない。
それでも。
俺はこいつの存在を欲していて。
その瞳に、どんなに別の奴が映っていても。
この欲望は止まらない。
「ごめんなさい」
と、無感情な笑みを見る度に。
「構わないですよ。僕が慾しいんでしょ?」
そんなことを云われたアノ日から。
俺達は、お互いの慾を埋める為だけに行為を重ねる。
それはとても意味の無いこと。
だけど。
それだけが俺とお前を繋いでいる。
報われなくても構わない。
このままで良いとさえ思ってしまう程、俺はお前を…。
慾しているのだろうか。
fin