ごめんなさい【BL】
3
「――本当なのか…ソレ……?」
「えぇ、本当ですよ。だから言ったじゃないですか『ごめんなさい』って」
「ふざけんな!! 謝って済むことじゃねェだろ!」
機械的に繰り出されるその言葉には、感情の欠片すら存在していない。
そしてその瞳は、オレを視ていない。
「お互い様ですよ」
冷え切った声が。
冷え切った視線が。
唯、向けられる。
「僕が知らないとでも思っているんですか?」
その言葉に、胸の奥がチクリと痛む。
「隠しているつもりですか?」
「…………」
たった一度。
君に逢えない淋しさを紛らわせたかった。
唯、それだけ。
「好きな人が、いるんでしょ?」
――違う。
「僕のこと、嫌いになったんでしょ?」
冷たい微笑みを浮かべて、オレに一歩詰め寄る。
「…違う。そーゆーお前は、オレよりアイツが好きなんだろ?」
聞く耳を持たないこいつに対抗したいのか。
オレは開き直った風に問いかけた。
「僕は貴方が好きですよ。貴方以外の人なんて要りません」
一瞬にして。
その瞳が淋しそうに伏せられる。
「でも」
伏せられた瞳がオレを捕らえた、その時には。
「僕以外の誰かを一度でも視た貴方は嫌いです」
唯。
冷たいだけの。
視線。
「僕の気持ち理解って貰えました? 僕、ちゃんと最初に言いましたよね『ごめんさない』って。貴方は言ってないですよね?」
謝るとか、謝らないとか。
そもそもオレは。
間違いなんて犯してない。
「なぁ……」
街で偶然、君に良く似た小さな女の子に目を留めただけ。
「もう。遅いですよ。謝っても駄目です」
そして、オレの愛する君は。
信じられないくらい鮮やかな笑みを浮かべて。
『ごめんなさい』
オレの前から姿を消した。
fin