ごめんなさい【BL】
5
幾らこの職場に男しか居ないとはいえ。
まだあどけなさの残る笑顔を振り撒くこの子を、不覚にも可愛いと思ってしまったとしても。
まさかこんなにも自分がこの子を想っているなんて。
――落ち着け、俺。
まだ何かしたわけじゃない。
まだ、この気持ちは誰にも知られていない筈だ。
――まだ、って。
――何か、って何なんだ!?
繰り返すのは自問自答。
繰り返すのは無駄に流れていく溜め息。
どうしてこんなにも思い詰めているのかと言えば。
それは目の前に愛しい子の寝顔があるからで。
――オレは断じて変態なんかじゃない…!!
思うだけ虚しい。
意図的に寝顔を見ているんじゃないんだ。
資料の準備に室長室に入ったら、応接セットのソファで寝てたんだ。
それだけ。
仕事の手を休めて、ソファの前に陣取って。
寝息が聞こえるくらい近くでその顔を見てはいるが。
これは偶然だ、ということを誰にという訳では無いが分かってもらいたい。
見れば見る程可愛くて。
柔らかそうな栗色の髪に、温かなその頬に。
触れてみたくなる衝動が駆け抜ける。
手を、伸ばし掛けて止める。
触れてみたいと思う。
その柔らかさを、温かさを、自分の肌で感じてみたいと思う。
――どっかのエロ親父か、オレは!?
可愛いこの子を目の前にして。
繰り返すのは自問自答。
繰り返すのは無駄に流れていく溜め息。
――触れて、もし起きてしまったら?
――何て言い訳をすれば良い?
こんな時、室長だったら躊躇せず触れて、『君が可愛いから』とかって悪びれるでもなくさらりと言ってしまうんだろう。
…って、どうして室長が出てくるんだっ!?