ごめんなさい【BL】
 
幾らこの職場に男しか居ないとはいえ。

まだあどけなさの残る笑顔を振り撒くこの子を、不覚にも可愛いと思ってしまったとしても。

まさかこんなにも自分がこの子を想っているなんて。


――落ち着け、俺。


まだ何かしたわけじゃない。

まだ、この気持ちは誰にも知られていない筈だ。


――まだ、って。

――何か、って何なんだ!?


繰り返すのは自問自答。
繰り返すのは無駄に流れていく溜め息。


どうしてこんなにも思い詰めているのかと言えば。

それは目の前に愛しい子の寝顔があるからで。

――オレは断じて変態なんかじゃない…!!

思うだけ虚しい。


意図的に寝顔を見ているんじゃないんだ。

資料の準備に室長室に入ったら、応接セットのソファで寝てたんだ。

それだけ。

仕事の手を休めて、ソファの前に陣取って。

寝息が聞こえるくらい近くでその顔を見てはいるが。

これは偶然だ、ということを誰にという訳では無いが分かってもらいたい。



見れば見る程可愛くて。

柔らかそうな栗色の髪に、温かなその頬に。

触れてみたくなる衝動が駆け抜ける。

手を、伸ばし掛けて止める。


触れてみたいと思う。

その柔らかさを、温かさを、自分の肌で感じてみたいと思う。


――どっかのエロ親父か、オレは!?


可愛いこの子を目の前にして。


繰り返すのは自問自答。
繰り返すのは無駄に流れていく溜め息。


――触れて、もし起きてしまったら?

――何て言い訳をすれば良い?


こんな時、室長だったら躊躇せず触れて、『君が可愛いから』とかって悪びれるでもなくさらりと言ってしまうんだろう。


…って、どうして室長が出てくるんだっ!?



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