Arabian Princess 〜海賊に連れ去られた王女
Ⅱ
西の海賊
「んっ…。」
サフィは鼻腔を擽(くすぐ)る海水の匂いと、肌に当たる生暖かい風に目を覚ました。
目の前に広がるのは、どこまでもどこまでも続く碧い海と澄み渡る青空。
ここは海に突き出した屋根付きのデッキのようだ。
半円型のそのスペースはかなりの広さがあって、その真ん中に縁(へり)なしの大きなベッドが横たわっている。
サフィはそこに寝かされていた。
そしてふわふわと揺れる感覚。
ーー船だ。
体が感じる浮遊感に、すぐに答えが見つかった。