刹那ッチ!
昭和46年3月14日、産まれてきたみたいやわ····
昭和46年3月14日、神戸市長田区で産まれたみたいやわ。長田港って、小さい漁港が近くにあって、入り組んだ下町の一角のボロアパート【永安荘】に住んでた。二間に風呂は無し。弟と妹とオトンとオカンと俺の5人暮らし。 テレビは白黒のアンテナ式のメチャ小さいテレビ。チャンネルをガチャガチャやり過ぎて変なポジションでテレビが映るねん。4チャンと6チャンの間が8チャンで、12チャン見るんは10チャンと11チャンの間とか。白黒やから「ゴレンジャー」見ててもどれが赤レンジャーで、どれが青レンジャーかあんまり分からへんねん。フカフカの布団や綺麗な子供部屋や家族団欒の食卓や、おいしそうなハンバーグ、エビフライ、唐揚げ、クリスマスパーティーや誕生日のケーキや、お正月のお年玉なんかは全部テレビの中の話しやって説明されてた。例えば、テレビでクリスマスの場面があって、プレゼントとか子供がもらって「ワーイ!」とかなってるやん?やっぱり羨ましいやんか。ほんで、「えぇなぁ··お母ちゃん、ウチはクリスマスないのん?」って聞いたら、オカンは「流ちゃん、クリスマスはキリスト教のお祭りやねんで。家には仏壇があるやろ?ウチは仏教やから全然関係ないねん。チーン!してお饅頭食べときなさい」って。俺は「ふーん、そうか」って、お饅頭食べる。 お年玉も学校とかで子供同士の間の話しで「今年はいくらもらった」とか「うち親戚多いからようさんもらえんねん」とかの話しになるやん?それをオカンに言うたら、オカンは「流ちゃん、お年玉っていうのはな、儒教の習わしやねんで。ウチはなんやったっけ?そうやんなぁ。仏教やろ?せやからお年玉は全然関係ないの。でも流ちゃんはいつもお利口さんやから古本屋さんでコロコロコミック買ってあげるわ」「うわーい。嬉しいなぁ!」って雰囲気で丸め込まれる。コロコロコミックは30円やのよ。事あるごとに何かもっともらしい理由つけられては、はぐらかされてた。でも、そん時は自分なりに納得してたと思うねん。恐るべしオカンの防衛本能やな。
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