刹那ッチ!
小学校ん時はたくさんの友達がおった。それなりに楽しかったし、勉強もせんと、何も考えんと気楽にバラエティーに富んだ毎日を過ごしていた。いろんな友達がおったけど、俺はみんなに憧れの念を抱いていた。「えぇなぁ」って。やっぱり俺ん家がメチャ貧乏で何も買ってもらわれへんかったし、お金がないから制約されるやん?クラスの人気者の奴らは、みんな少年野球やってて足も速いしカッコええねん。その少年野球のジャンパーってあるねんけど、それがまた俺の羨ましい心を刺激するんよ。オカンに言うても「アホか!そんな金のかかる事出来ひん!」いくら食い下がっても「ヨソはヨソ、ウチはウチ!そんなにヨソの家が羨ましいんやったら出て行け!」って、いつもオカンは怒鳴る。せやから諦めとったよ··· いっつも“バッタもん”しか買うてもらわれへんかったなぁ。当時はアディダスのヤッケって、友達らの間でメチャ流行ってな、明るいブルーの地に袖の上の方に三本ラインが入ってるねん。胸の所にはアディダスのロゴと、三枚の葉っぱを重ねたおなじみの模様が入ってる。「俺も欲しい!」やったら、また「ヨソはヨソ」ってなるねん。ほんまにMAX欲しい時は、泣きながら頼むねん。心から泣き倒したら、ちょっとは前向きな答えが返ってくる。「考えとくわ」って。数週間が経ったころ、「流ちゃん、ヤッケ欲しがってたやろ?買ってきてあげたで」ってオカンは俺の前にダイエーの紙袋を出してくる。「やったぁ!」って早速着てみると何か違和感がある···「流ちゃん、よう似合うわぁ」って言うてくれてるんやけど、何かおかしい。よくよく見たら、袖の上のラインが三本のはずやのに四本ある。胸のロゴも、アディダスじゃなくてアドベンチャーって書いてある。恐る恐る「えっ?これって···アディダスでは···ないんじゃ···」って言い終わるまでにキッ!って睨まれて、「流ちゃん、アディダスは六文字やねん。アドベンチャーは九文字や。ほんで、三本ラインより四本ラインの方が丈夫やねん!何か文句あるん?」って取り上げようとする。俺は慌てて、「結構です。大切にします」って言わなしゃあないねん。それでも喜んで学校に着ていっとったわ。なんせ、メーカーもんなんか夢のまた夢·····
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