刹那ッチ!
「おっちゃん!」
「おぉ、昨日のボクやないかい、どないした?エサ買いに来たんか?『利夫』は元気か?」
おっさんの顔を見たとたん俺は悲しみと憤りで泣いてしまった。
「おっちゃん、朝起きたら『利夫』が死んでたんや!なんでやろ?おっちゃん元気や言うから俺、一生懸命『利夫』を育てよう思ったのに!『利夫』が死んだよぉ!うわーん!」って大号泣。
おっさんは「おぉ、そうか。『利夫』が死んでしもうたんかぁ。あんな元気やったのになぁ。おっ!ちょっとボク待ちや!」と言って、ズボンの後ろのポケットから、ボロボロの黒い手帳を取り出してペラペラめくり出した。
「うわっちゃぁ!そうか!うんうん、なるほどなぁ!そらしゃあないで!」と、一人で頷いて納得している。俺は全然納得してないから、
「何なん?どないしたん、おっちゃん?」と、聞いた。おっさんは少しりりしい顔になって、
「あのな、ボク。昔からの諺で、『つるは千年、亀は万年』っていうくらい長生きするんや!」
「うんうん、そうなんや。」
「ほんでな、おっちゃんもおかしいなぁと思って、今『利夫』の生年月日を調べたんや。この手帳に全部書いてあんねん。」
「うんうん、ほんでどないやったん??」
「いやぁおっちゃんもびっくりしたんやけどな、『利夫』が生まれて昨日でちょうど一万年目やわ!せやから『利夫』は寿命やったんや!」
「うおぉー利夫ぉぉぉ!」再び号泣。
せやけどそんな訳あらへんやん!何ぼ何でも『一万年目』っておっさん!ええ加減にせなアカンわ!
ほんでも当時は納得して家に帰ったよ。おそるべし夜店の強者!百戦練磨っていうのは、あぁいうおっさんの事やねんやろなぁ。
昔はさぁ、そんなんばっかりやったなぁ。平和っちゃあ平和やねんけどな。

 なんか学校の前とかに毎週子供相手の『実演販売』みたいなおっさんや『ヨーヨーチャンピオン』や『手品師』とか来るねん。メチャうさん臭いねんけど、子供はアホやから毎回毎回騙されるねん。
「『一週間で消える魔法のペン!』どこに書いても一週間で消えるよ!」って、子供相手に六日間売りまくって、七日目には『おっさんが消える』ねん!って、おい!そらもうサギやでサギ!犯罪やないかい!
でもな、そんなんばっかりや。せやから大人になってからなんか、絶対に騙されたりせぇへんよ。えぇ勉強やったわ。
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