刹那ッチ!
オカンはいつも怒ってた。もちろん原因は俺やで。訳の分からん数々の行動でキィーッてさせてまうんやろなぁ。
さらに輪をかけてたんがオカンのしてた内職やったんちゃうやろか?造花や靴の部品の内職してたような記憶が残ってる。
たまに「もうイヤやぁ!」とか、「あ~イライラする!」って、汚い朱色のテーブルを叩いてた。
それを見ていてなんか辛かった。でも、ただ見てるだけしか出来ひんかった···。

ほんでボソボソっと、たまに言うねん。
「流ちゃん、お父さんとお母さんは、流ちゃんが生まれてきたから結婚したんやでぇー。」って。
そん時は「そうなんかぁ」って聞いてたけど、大人になって考えると、あの時のあのオカンが漏らしてたことの真意は「あんたさえおらんかったら、私はこんな飲んだくれの暴力男と結婚せんでも良かったんや。こんなチマチマ内職して、貧乏な惨めな思いする事もなかった···。」って意味やったんとちゃうやろか?


それからしばらくして、俺が小六の夏休みにオトンとオカンは離婚することになる。
今は詳しくは書かないが、原因はオカンの浮気発覚やってん。いきなり一夜にして、オカンと離れ離れになってしもたんよ。俺はオトンに引き取られることがイヤなんじゃなくて、友達と同じ中学に行けないことがイヤやった。
「中学なっても一緒に遊ぼうや」とか、「何のクラブ入る?」って話もしてたと思うねん。
 俺は自分なりに中学校生活を夢見てた。ごっつい仲の良かった奴とか仰山おったもん。楽しみにしとったわ。オカンとも、将来の事やこれからの人生の事とか、色々と話したかったなぁ。
「流ちゃんはこの道を目指しなさい」とか、「あんたは何が向いてるんやろなぁ」とか。
俺は「どうかなぁ?俺って何したらええんやろ?中学行ったら何のクラブに入ったらええんやろ?」って話がたくさんしたかったけど、結局は出来ひんかったなぁ。
 これは別にオカンが悪いわけじゃないねん。多分そうやと思うねん。ごめんな、産まれてしもうて。ホンマごめんやで。せやけど俺は、白黒で風呂なしの生活が好きやったよ。
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