一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
誰の口からでもない。
少年本人の口から聞いたのだ。
『お、御姉様がいらっしゃるのですか?』
『ああ。同い年のね』
『お、おな…?』
『……双子だよ。私たちはね』
たったそれだけで、隠されていた謎がとけた。
古代から、双子は忌むべき存在と言われてきた。
酷いときは生んだ母親共々殺すことも珍しくない。
それほどまでに双子は恐ろしいものと言われていた。
少年は双子で生まれてしまった。
それも、皇子の身で。
呪われた王と王が称されるのを恐れて隠したのだ。
そこまでは安易に推測がつく。
では、その姉は?
姉はどこに隠されたというのだろうか。
残念ながら、麗にもそれは話してくれなかった。
それほどまでの秘密なのだ。
「……」
麗が少年の姉への想いに気づいたのは、姉の話をするときの目だった。