一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
「今日呼び出したのは、王の後継者についてだ。お前も聞いてるだろ?」
「…は、はい…」
「なら話は早い。私への処置が今日言い渡された」
身を固くし、ただ日子のみを見つめる麗。
(…かくごはできてる…)
なのに、口から吐く息が震えているのはなぜだろう。
手を握りしめてるのはなぜだろう。
「私は、海に流されることになったよ」
「……え?」
この時代、海に流すとは死刑よりも重いもの。
何もない海をたださ迷い、餓死しても遺体は焼かれることはなく、ひっそりと腐乱していくのだ。
「なっ…!う、海に流されるとは……」
「ああ、言い方が悪かったね。もう少しいい言い方があった。死刑じゃないよ」
また日子は笑うが、笑い事じゃないと怒る麗。
だが、死刑じゃないという事実には胸を撫で下ろした。
「…あの、海に流されるとは…」