一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
当時、其処はたくさんの国に溢れていた。
時は春秋戦国時代のあと、日本がまだ弥生時代の頃である。
食い、食われる弱肉強食の世界。
まだ人が人として認められてないような、今では考えられない時代である。
そこを統治した国があった。
そしてそこの王は、一つの秘密を抱えていた。
「……」
かっ、こっ、と上等な靴を響かせながら宮殿の奥へと歩いていく。
どんどん暗くなっていく廊下。
人っ子一人いない廊下は、一国を治める王に相応しくはない。
――宮殿の一番奥に、その部屋はあった。
真っ暗な、光が入らないその部屋。
存在を知るのは、王と部下と、女官のみ。
そこには、一人の少年がいた。
王は、その少年に会うために廊下を歩んでいたのだ。
きいい、と木が擦れる音がして、扉が開かれる。
外にいた一人の女官が扉を開き、王にうやうやしく頭を下げ、足を折り地に頭をつけた。
それを通りすぎ、中に足を入れる。
様々な紋が掘られた豪華な扉。
中の部屋も美しく、金銀財宝を多分に使っていた。
長く結われた黒髪に、上等な衣装。
囚われの身と表現するには艶やかである。
年は、17、8だろうか。