一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
「私たちは流産と称して生まれた。母親の名や顔は知らない。殺されたか、追放されたかも存じない」
「…口封じでございますか…」
「麗は頭が良いね。その時の産婆も殺されたらしいし、やはり殺されたんだと思う。
さてと、私たちの話だ。
姉と私は二人で長いこと閉じ込められていたんだ。
あの宮殿の奥の部屋に。
でもある日、やんちゃが祟って私たちは部屋から出てしまった。
それを官に見つかってしまった。
王の御子が双子とはなんたることだと言われ、王は責任に問われた。
結果、どうしたかというと、島流しで責任をとったんだ。
世間というより官の信頼を得るため、双子を流したということにして、姉だけを流した。
しかし、やはり流したのが双子だとバレるのがいやだったのだろう。
姉は『王の娘である彼女は太陽の光で処女懐妊をし、これを畏れた王はその息子と共に船に流した』…そう記に残された」