一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
「ちなみに、7歳の時だ」
「…無理があります」
「無理やりにでも辻褄を合わせなくてはならなかったんだ。
一国の主として。
とにかく、私だけ残されたんだ」
「……」
また、悲しそうな目。
二人きりで生きていたのに、いきなりその片割れが消えてしまう恐怖。
――どれだけ辛かったのだろう。
(…そばにいてやりたかった…私が、日子さまを支えて差し上げたかった…)
叶うことのない願いに、涙が出そうになる。
「麗、その顔はやめてくれ。私が悲しくなる」
「日子さま…」
「お前は優しいね」
月明かりに爽やかな笑み。
(それは、私が日子さまを好いているからでございます…)
そう言いたいのをまた飲み込んだ。
「それにね。私は父に仕返しができるんだ」
「し、仕返し…?」