一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】


(私だって見たい…日子さまと一緒に…)


たまらず、麗は叫んだ。



「ひ、日子さま!」



息を吸う。

恋の相手がいなくなるのは嫌だ。

ならば、行動をおこすしかない。



――身分違い?わかってる。


だけど、だけど。



(好きになってしまったんだものっ…)



悲しそうな瞳に、魅せられた。


姉を想う男の目に、羨望した。



彼のとなりに立ちたいのだ。



名の知れぬものではなく、彼に嫁ぎたい。






「私も連れていって下さい!日子さまと共に参りたいのです!」







「麗…」



目を見開いた。


驚いたように、口も開く。



そして――笑った。



「麗、何を言ってるんだ?蓬莱なんてないのかもしれないんだ。それに、まず着くのかもわからない。自殺をしたいのか?」


「ち、違います!」


(蓬莱目当てと思われた…?)


< 24 / 34 >

この作品をシェア

pagetop