一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
(私だって見たい…日子さまと一緒に…)
たまらず、麗は叫んだ。
「ひ、日子さま!」
息を吸う。
恋の相手がいなくなるのは嫌だ。
ならば、行動をおこすしかない。
――身分違い?わかってる。
だけど、だけど。
(好きになってしまったんだものっ…)
悲しそうな瞳に、魅せられた。
姉を想う男の目に、羨望した。
彼のとなりに立ちたいのだ。
名の知れぬものではなく、彼に嫁ぎたい。
「私も連れていって下さい!日子さまと共に参りたいのです!」
「麗…」
目を見開いた。
驚いたように、口も開く。
そして――笑った。
「麗、何を言ってるんだ?蓬莱なんてないのかもしれないんだ。それに、まず着くのかもわからない。自殺をしたいのか?」
「ち、違います!」
(蓬莱目当てと思われた…?)